" それは発見に必要なこと、とりわけ科学的発見に必要だろうと思えたことで、推測するためのアート(技芸)感覚、未知のものを見るスキル(技能)、それが妥当である(レリバント)と判断する標準性、この3つである。アート、スキル、レリバンスだが、いいかえれば推理を進める方法、未詳に分け入る方法、妥当性に気がつく方法ということになる。ポランニーはこの3つが交差して発見の歯車になっていると考えた。  これで少しは見当がついただろうが、ポランニーは技能の中にこそ、のちの創発を喚起する方法が芽生えていると見通したのである。すなわち、発見は対象知(knowing what)によっておこるのではなく、方法知(knowing how)によっておこるにちがいないと踏んだのだ。もっというのなら、ある個人の知識の総体のなかでその知を新たな更新に導くものは、その知識にひそむ方法知ではないかということなのである。その方法知がアート、スキル、レリバンスで組み立てられていると見たのだ。"

松岡正剛の千夜千冊『暗黙知の次元』マイケル・ポランニー